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カナタノキモチ【うみねこのなく頃に 嘉音&紗音】

10/6は嘉音君のお誕生日です★少し早いですがお誕生日おめでとう嘉音君(^^)。
明日のイベントで発行する本でいっぱいお祝いさせてもらったので、
今日はしんみりしたお話でも・・・と思ってます。

久々のうみねこです。
時間軸としてはEP2の4日の22時以降のお話のつもりで書いてます。
といっても前半は殆ど回想ですが(笑)。
なんとなく、これぐらいの時間かな?的な時間で予約投稿してみました。
解決篇以降の解釈を交えつつのゲーム盤上のお話ですが
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

****** ▼ 追記記事 ▼ ******















1、嘉音





僕は母親の顔をしらない
だけど産まれた時、微かに聞いた泣き声は覚えている。


そばにいてくれる…
たのしいときは、
        いっしょにわらってくれる…?
かなしいときも、いっしょに…
ねえ、おねがい

――――――――――もうわたしを、ひとりにしないで


…その声が誰なのかは、今でもわからない。

だけど僕は、

―――福音の家で紗音と出会って、
―――毎日がとてもとても楽しくて
―――姉さんが右代宮家に奉公に入ってからは、ずっとずっと寂しくて

だから僕は、

―――僕は紗音にとって、血のつながりのない弟だけれども
―――せめて紗音が、僕がいなくても笑っていられるようになるまでは

ずっとずっと紗音と一緒にいたいと、願っていた。








「今日ね、こんなことがあったんだよ。」

最近ずっと幸せそうな姉さんの話題は、大体譲治様だ。
譲治様も最近は、小さな用事でも頻繁に六軒島に訪れるようになり、
なんとなく、こういうのに疎い僕でも二人の関係の変化がわかるようになっていた。

「…よかったね。譲治様に助けてもらえて。」
「うん。これで何度目かな。
 勤めてもう何年もたつのに、たびたびミスしちゃうのは申し訳ないけれど、
 それでも、やっぱり、こういうのは嬉しいね。」

そう語る姉さんは、ものすごく女の子の顔をしていた。
うっかり者の癖に、僕の前ではしっかりしたふりをする姉さんとは違う。
幸せそうで、ほんわかして、とても可愛くて、
…僕じゃ、姉さんにこんな顔させられない。
最近、朱志香お嬢様が僕にこんな顔をむける。
すごく可愛くて、だけど同じ位びくびくしていらっしゃるのが悲しくて、
見ていると心をかき乱されるお嬢様のその顔が、僕は嫌いで…。
…だから僕は、ひょっとしたら来るべき時が来たのかなと思っていた。

「姉さん」
「なに?」

僕の声の真剣さに気付いて、紗音はきょとんとした顔をする。

「そろそろ、僕は右代宮家のお勤めをやめた方がいいかな…。」
「え!?ど、どうして!???」
「………なんとなく、そんな気がして…。」

…理由は良くわからない。
でも紗音が幸せなら、僕がここにいる意味なんてない気がした。
僕は元々、あまり金銭に執着がない。
別に高給な右代宮家でなくても、どこでだって生きていけるのだ。

「嘉音君は、もう右代宮家のお勤めは嫌なの??辛いの??」
「…そうじゃないけど…。」

…別に、そうじゃない。
ここを出てやりたい事なんてないし、知らない人ばかりの所にいくのは嫌だ。
家具である僕には、夢も生きる希望も勇気も始めからない。
ないなら、紗音と一緒にこの六軒島にいる方が、どれだけ幸せかしれなかった。
だけど、これ以上僕がこの島にとどまる事は、紗音にとって良くない事のような気がして…。

「……姉さんはもう、譲治様が支えてくれるから…。」

…それが寂しくないと言えば嘘になるけれども、それでも…

心の中に、何故かチェスの駒置き場が浮かんだ。
…僕は駒じゃない。
姉さんと別れたとしても、この島をでて一人で暮らして行く。
…だけど何故か、しまわれた駒達は無性に、僕の近親感を掻き立てた。

誰かの手がチェス盤の駒に伸びる。
その白い手は、チェス盤の一つの駒を手にとって

「…どうして。」

ためらうことなく、盤上の駒を一手先に進めてくれた。

「譲治様と嘉音君は、違うよ。
 どっちも大事で、どっちも大切。
 譲治様がいれば嘉音君がいらないなんて、絶対にない。
 嘉音君が、ここをやめたいのなら、それでいいの。
 寂しいけど、私は姉さんだから、弟である嘉音君が巣立っていく事を喜ばなきゃいけない。
 でも、私に遠慮してのものだったら、私は悲しいな。
 だって私は、嘉音君と一緒にいたいと思ってるんだから。」

…馬鹿だと思う。
…この一手は、禍の種でしかないのに。

それでも紗音がそういってくれた事が、僕にはすごく嬉しかった。
自分でも口元に自然と笑みが浮かぶのがわかる。

「…じゃあ、姉さんがここをやめたら、僕もここをやめようかな。」
「クス。じゃあ当分はまだ、一緒だね。」
「…うん、そうだね。当分は、僕達は一緒にいられるね。」

…重ねてくれた姉さんの手の平が、ぎゅっと僕の手を握ってくれた。
…姉さんのこの決断が正しかったのか、僕にはわからない。

振り返ってた今でも、あの時の最善手がなんだったのかはわからない。
だけど


――――――数カ月後、僕はこの決断を後悔した。
――――――それだけは、確かに現実だった。




2、紗音




――――――あのさ、紗音。嘉音君って、どんな女の子好きなの??
――――――紗音と嘉音君って仲良いけどさ。
――――――やっぱり、紗音みたいな、おしとやかな子が好みなのかな…?

「………え。」

いつものように、お嬢様の部屋でおしゃべりしていたら、
急に真っ赤になって、突然そう言われた。

ちょっとびっくりした。
お嬢様が嘉音君に興味があるのは気づいてはいたけれども、
こんな風にはっきりと聞かれる事は、今までなかったから。

お嬢様はうつむいて耳まで真っ赤で可愛かった。
譲治様の事でからかわれてる私も、きっとこんな顔をしているのかもしれない。

「…さあ、どうでしょう…。嘉音君はあんまり…というか全く女の子の話をしないので…。」
「そうなの!?うーーー、でもそうだよなーーー。嘉音君、芸能人の話題も全然だし。
 好きなアイドルから女の子の好みリサーチしてみたんだけど
 興味ありませんの一刀両断で全く参考にならなかったんだよな・・・。」
「…ただ、嫌いな女の子ならちょっとわかります。」
「!!!ホント???ていうかまさか私だったりしねーよな???」
「まさか。お嬢様を嫌いな使用人がいる訳ないですよ。
 誰にも言わないって約束してもらえるなら、いいますけど…。
 本当に内緒ですよ?流石に嘉音君に怒られちゃいますし…。」

私の言葉にお嬢様が一生懸命頷いた。
こくこくこくこく、水をのむ駒鳥のように首を動かしているのがおかしくて可愛い。

「瑠音は…嫌いみたいです。ちょっと、その…考え方が根本的にあわないみたいで…。
 あと、鐘音と眞音もあんまり…。嘉音君もその…ちょっと難しい年頃なので…。」
「…それ、紗音以外の使用人の女の子は基本的に駄目って事??」
「…あ、あはは。えっと…熊沢さんは好きみたいですよ。」
「いや、流石に熊沢さんはねーだろ。
 ………………くそー。ますます紗音がタイプな気がしてなんねーぜ。
 紗音が譲治兄さんにメロメロで心底感謝するよ…。」

…だけど紗音と私って絶対タイプ真逆だよな・・・。
そういってお嬢様はしょんぼりうなだれた。
普段は前向きで大胆なお嬢様が、嘉音君のことだと別人のように
一喜一憂しているのが、ものすごく可愛かった。

しばらくは、何か言いたげな沈黙が続いていた。
私が黙って促していると、お嬢様がぽつぽつと…少しづつ思いをこぼしてくれた。

「…嘉音君をさ。文化祭に誘いたいんだ。」
「…え。」
「一応その…私の彼氏のふりしてほしいって名目もあるけど…
 で、ふりから…その…ホントの彼氏になってほしいって、下心だってあるけど…
 家の学校、部活動とか盛んだからさ。
 嘉音君と一緒に文化祭回れたら、楽しいかなって…思って。」

嘉音君と朱志香様が仲良くなる。
…それはとてもとても素敵な未来に思えた。
私と譲治様と、嘉音君とお嬢様と…
かつて戦人様としていたように、4人で仲良く過ごす事が出来たなら、
自分の可能性を閉ざしてしまう嘉音君の心を、変えられるのではないかと思ったから。

「素敵だと思います。私からも嘉音君に伝えておきますね。」

…だけど嘉音君はすごく悲しそうに、私の提案を聞いていた。
どうして嘉音君が悲しそうな顔をしているのか、私にはわからなかったけれども、
ただ一言、「姉さんはそれでいいの…」と確認された。

…聡くて繊細で…臆病な嘉音君は、
この頃から私たちの運命を気付いていたのかもしれない。
それでも

――――――――私はあの日、あの時、
嘉音君と譲治様とお嬢様と、4人で幸せになりたかったのだ。






3、彼方




10/4。親族会議当日。

昼間はベアトリーチェが来訪したり、彼女の手紙が届いたりと大騒ぎだったが、
結局夜にはいつもの鞘に収まったようだ。

親族達は本宅で金蔵の遺産の議論で奮闘し合い、
ゲストハウスでは従兄妹達が愚痴りつつも雑談に花を咲かせる。

違う事はただ一つだけ。
唯一のそれは、今紗音の左手の薬指に輝いていた。

台風の風雨にさらされた薔薇庭園で、
傘もささずに雨ざらしになった嘉音は、
そんな彼女の背中を、とても悲しそうに見つめていた。

「………姉さんは、馬鹿だな。」
「ごめんね。せっかく、嘉音君がベアトリーチェ様に頼み込んでくれたのに……。」
「………それもあるさ。……でも。」
「じゃあ、私と嘉音君はどちらかしか結ばれないのに、嘉音君をけしかけ続けた事?」

紗音の言葉に、嘉音が弾かれたように顔をあげる。
…昼間からずっと、幸せそうだった彼女の表情に、
今は積乱雲のように憂いが降り積もっている。
譲治といた十数分前は、とてもとても幸せそうだったのに、
今の彼女のそれは、懺悔を請う教会の信徒のように厳粛だった。

「………いつから、気付いて?」
「いつからだったかな…。おぼろげにならね、私も少しは感じていたの。
 思えば、ベアトリーチェ様がブローチを譲っていいって言った時に気付くべきだった。
 …魔法の奇蹟は、たった一人の為にしか使う事はできないのにね。」

それでもずっと、実感はなかった。今日譲治の婚約指輪をこの目で見るまでは。
…土壇場になって初めて、彼女は望んでいた事の意味にやっと気付いたのだ。

振り返った紗音は、ごめんね…と苦しげに笑った。
…少年が今までどうして苦しんでいたのか、やっと彼女にも理解できたから。

だけど嘉音にはわからなかった。
おぼろげでも、気付いていたならば…

「ならどうして…。」
「………。」
「……姉さんは、僕を……。」

続けたかった言葉は、だけど紡げなかった。
…これ以上言葉を続ける事は、今まで姉の注いでくれた愛を、否定する気がしたから。
それでも紗音は嘉音の目を見て告げた。
…伝えなければ、きっと思いは正確には伝わらないから。

「嘉音君に、幸せを諦めて欲しくなかったから。」

嵐の薔薇庭園で、紗音はそういって笑った。
ためらうことなく、凜として、はっきりと。
彼が愛情込めて育てた薔薇は、今この瞬間も台風に嬲られて一瞬ごとに無残に散っていくけれども、
彼を愛してくれた一輪の薔薇だけは、今も変わらず、晴れやかに咲き誇っていた。

――――――――――もうその薔薇は少年の薔薇ではないけれども
――――――――――その愛だけは変わらず、少年のものだ。
――――――――――これだけは生涯誰にも奪えないだろう。
――――――――――少女が伴侶と心にきめた青年でさえも。絶対に。

「…ごめんね。姉さんの伝え方が、下手くそで。
 下手だったから、結局嘉音君を泣かせちゃったね。」

――――――――――泣かないでほしかった。
――――――――――幸せになってほしかった。

「やりなおせるなら、次はもっと上手に伝えたいな。
 その結果、嘉音君と戦う事になるのはわかってるけど、それでも。」

――――――――――例え一緒に幸せになれなかったとしても
――――――――――今日みたいな後悔の涙を、嘉音君が流さないですむように。

「…ごめん。姉さん」
「なんで。」
「…ちゃんと、受け取ることができなくて。」
「うん。それは、嘉音君の罪だね。」

気付けばもう、魔女のターンは半分が終わろうとしていた。
もう遅い、悲しい位、手遅れ。
従兄妹たちはもう寝静まり、目覚めたら六つの駒が駒置き場におかれ、
嵐と惨劇に、この島の全てが翻弄されていく。

――――――――――少女のリーチに追いつくには、致命的に全てがたりない。
――――――――――そして少年が覚悟を固める為の時間も、もう致命的に、ない。

…だけど紗音だけは知っている。
嘉音だって本当は、紗音と同じ位、幸せになりたかった事を。

「ねえ、嘉音君。」
「…なに、姉さん。」
「ベアトリーチェ様。絶対に私と譲治様を生贄にするって言ってたけど
 ……最後には黄金郷に、招いてくれないかなあ…。」

無理かなあ…と紗音は少し困った顔で笑った。

…黄金郷は全ての願いが叶う場所。
だからそこなら、嘉音と紗音の夢も一緒に叶うのだ。

いけたらいいなと、心から思う。
女としての夢を叶える為ではない。女の夢はもう叶ったのだから。

―――――――――姉のユメを叶えるために、紗音は心からそう願った。

姉の言葉を雨ざらしのまま聞いていた嘉音は、まるで泣いているように見えた。
そんな嘉音を紗音はそっと抱きしめながら、台風の狂ったどす黒い空を見上げる。

―――――――――私のユメが今日叶ったように
―――――――――いつか嘉音君のユメが叶う世界が、どこかのカナタにありますように。





(FIN)






紗音と嘉音の関係の不可侵性は
やっぱりここに尽きるんじゃないかなあと思ってます。

お互いが邪魔なのに、最後までお互いがあり続けた。

その矛盾。その執着と愛情。

…盤上を離れて俯瞰すれば、それは単なる葛藤かもしれないけれど、
ゲーム盤の彼らの視点から見ると、それはとても不思議で滑稽で
…だからこそ、信じられないほど尊いものなのだと思っています。


EP6でどこまでも嘉音をけしかけ、最後まで二人で決着をつけようとした紗音の思い。
…ベアトリーチェという駒にはない、嘉音という役割。
それが多分、ヤスの中の紗音としての心に
最後まで捨てられなかったものなのかな…。それとも違うものなのかなあ…。
…嘉音を思う時は、未だにものすごく切なくなるけれど、
ただ確かに信じられる愛情がある事がとてもとても嬉しいなと思います。


久々のうみねこ楽しかったです(^^)。
嘉音は元々、書きやすいキャラでもあったので
数年ぶりでも違和感なくかけて、楽しかったです。
タイミング的にやっぱり今後嘉音を書く事は難しいと思ってますが、
散以降の解釈を交えたものを二本久々にかけてとても嬉しかったです。
読んで下さってありがとうございました(^^)。




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