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鎮魂歌【うみねこのなく頃にEP6】

※EP8までのネタバレを含みます。※

EP6の紗音と嘉音の決闘直後の紗音のモノローグ。
EP8までみて感じていたEP6の決闘の解釈とか考えて
つらつらと書いてみました。

久々のうみねこですが、良かったら読んで頂けると嬉しいです。

あと場所が場所なので想像つきそうですが、
非常に鬱いので苦手な方は注意して下さいです。ぺこり。

****** ▼ 追記記事 ▼ ******









むせかえるような薔薇の香りと、
鳴り響く、一発の銃声。


譲治がふらふらと傍に寄ってきた紗音の暖かい身体を抱きしめ、
半狂乱に泣き叫ぶ朱志香が、伏した嘉音の冷たい亡骸を抱く。
…朱志香はまだ、気付いてはいない。
大好きな少年を始めて抱いたのが、今この瞬間であることを。
その事実の残酷さを、
――――――――――――朱志香はもう、一生知らない。

黄金境の足音は、すぐ後ろまで迫ってきていた。
優しい慈悲と、愚者の塔の崩壊は、
もうすぐそこにあるのだから。










     鎮魂歌










紗音と譲治は、悲しげにもう一組の恋人達を見る。
優しい言葉なんて、かけられない。
かける権利なんて彼らにはない。

戦う前に彼らは言った。

「どちらが勝っても、お互いを祝福しよう。」

…でもそれは、自分が敗者になった時の為に残した言葉。
勝者になった以上、何の慰めの言葉も相手には届かないのだから。

気遣うように紗音を抱きしめた譲治の手。
紗音は一度うな垂れた後に、悲しげな目で彼をみあげた。
そしてまっすぐに彼を見つめたたまま、
ゆっくりと、でも確かな意思で彼の胸からその身を外した。
それは優しい、でも明らかな支えの拒絶の意思表示だった。

「…紗代」
「…ねえ、譲治さん。嘉音君はずっと、ずっと私に遠慮していたんですよ…。」
「…そう、だね。今なら…嘉音君が躊躇っていたのは、
 ただ、臆病なだけじゃなかったことが…僕にもわかるよ…。」
「…馬鹿ですよ…。
 私は、嘉音君をおいて、先に進んでしまうような姉だったのに…。
 わかってたんです…、
 嘉音君は、私を裏切らない。裏切る事が、出来ないんです。
 だから私、嘉音君を許したんです。嘉音君に幸せを諦めて欲しくなった…。
 許したらこうなるって、わかっていたのに…。」
「…紗代」

紗音の嘆きの言葉を聞きながら譲治は
行き場のない両の手を、ぎゅっと強く握りしめた。

…本当は、肩を抱いて支えてあげたかった。

でもそれを紗音が望んでいない以上、
譲治が出来る事は支えたい思いを耐える事しかないのだ。

その時、ぽつんと、紗音は言った。
それは本当に虚ろで
乾いた、聞く者の嘆きを誘うようなとても悲しい声だった。

「…でも、きっとこれも、予定調和なんです。
 私は、私を裏切る事ができない。
 嘉音君が紗音を裏切れないように、紗音も紗音を裏切れない…。
 だから、今この景色をみていると思うんです。
 私、最後まで、嘉音君を私の都合でふりまわしてしまった…。」
「紗代、そんなことはない。嘉音君は、そんなことおもっていない」
「…わかってます。
 でも、嘉音君がそう思っていないからこそ、私はそう思わないといけないんです…。」

亡霊が怖いといった紗音を励まして、一緒に夜の館を回ってくれた。
悲しい事があったら、怒れない紗音の変わりに怒ってくれた。泣いてくれた。
いつだって、一緒にいた。
隣の部屋で眠る時も、心はいつも一緒だった。
決して生々しい感情で見る事は出来ない人だったけど、
大事な大事な、世界でただ一人の、特別な少年だった。

紗音は泣かない。
泣きたいけど泣かないのは、それが彼女に許された唯一の罰だから。
それが自分で選んだ結果である以上、
朱志香が今泣いていて、嘉音が彼女の恋の犠牲になった以上、
紗音に泣く権利なんてないのだ。

その罰がどれだけ残酷なのか。
それは多分、誰も理解する事は出来ない。

ただ一つだけ優しいのは
この罰が、期間限定の罰であること。
紗音はそれを理解している。
自分が今最後の矜持を維持できているのも、
この罰が、限られた時間のものだからなのだ。

もうすぐ世界は崩壊する。
…島外の観測者達は、何も知らない。
嘉音の死も、朱志香の嘆きも、紗音と譲治という結ばれた罪の恋人も。

ベアトリーチェは右代宮戦人と添い遂げられるのか。
紗音と譲治は、現実そのままに婚約を成立させるのか。
嘉音は、長い懊悩の末に、朱志香への恋心を認め、思いを告げるのだろうか。

未知の猫箱の無限の可能性は、遠からず消えていく彼女にはわからない。
わからないけれども

全部ここにあった。ちゃんとあったのだ。
恋をした。諦めなかった。怖くてもちゃんと向き合って戦った。
全ての想いを存在させるために、事実を残す為に、痛くても駒を進めたのだ…。
その為には、魂の片割れさえもこの手にかけた。
だから、だから願わくば、

――――どうか残されたこの物語に、
    自分が与える事が出来なかった優しい優しい結末を。


「…大丈夫です。譲治さん。」

紗音は詠う。
巫女である彼女の詠唱は、そのまま世界の祝詞となる。

「世界はこんなにも綺麗です。だから救済は、すぐそこなんです。」


――――では後ほど。

決闘の最後の瞬間、嘉音が紗音に残した微笑み。
その最後の言葉が、
紗音に許された、愛する弟の最後の面影と今の希望だった。


(FIN)






以前書いた嘉音のモノローグ「Hello world」と対になるお話です。
シャノカノアンソロ読んでちょっとシャノカノ書きたくなったので
書いてみました。

…EP8での嘉音との対話とか見ると
紗音はやっぱり、猫箱の無限の可能性にかけてたのかなと…。
EP6の「では後ほど」には凄い違和感があったんですけど、
全部通してみて振り返ると、
やっぱりEP6の決闘は、
紗音にとって譲治と結ばれる為のものじゃなかった。
なら一体なんだろうって考えると、
今まで朱志香と恋が出来なかった嘉音の為に
嘉音が朱志香を愛し愛そうと努力した事実を残す為の決闘だったのかなあと
そんなことをおもったりしました。

ずっと書いてみたいなあと思いつつ
ずっとAB!かいてたのもあって、
なかなか時間をみつけられなかったのですが
書けてよかったなあと思います。

読んで下さって有難うございました。


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